テンセントが日本企業のメタバース参入支援を開始【バーチャルヒューマンなど4サービスを発表】

Virtual Human|Tencent Cloud

2022年1月25日、Tencent(繁体字中国語:騰訊、本社:広東省深セン市 以下、テンセント)は、オンラインイベント「Tencent Cloud Day」にて日本企業向けのメタバース事業支援サービスを発表し、日本のメタバース市場に本格的に参入する。なお、日本法人としてTencent Japan合同会社(本社:東京都港区)がある。

Tencent Cloud社SVP Poshu Yeung(ポシュ・ヨン)氏によるTencent Cloud Day 2022の案内映像

1.Tencent(テンセント)とは

テンセントは、中国の大手IT企業。インスタントメッセンジャーの「QQ」や「WeChat」を始め、オンラインゲーム、ストリーミングビデオ配信、オンライン決済など多くの事業を手掛けている。2020年通年の売上高は約7.7兆円で前年比28%増、オンラインゲーム事業の売上高は約2.5兆円で前年比36%増。「WeChat」の月間アクティブユーザー数は12.6億人(2021年9月末時点)と、中国市場では圧倒的なシェアを誇っている。

また、日本企業との提携や買収が報じられることも少なくない。直近の2年間だけでも次のような動きを見せている。

2020年1月:Nintendo Switch向けゲームソフト「ベヨネッタ3」などのベヨネッタシリーズなどを開発するプラチナゲームズ株式会社と、オリジナルタイトルの開発と、中国市場やスマートフォン市場で展開などを目的として、資本業務提携を締結。

2020年5月:オンラインゲーム、コンシューマゲームソフト、アミューズメントゲーム、音楽・映像コンテンツ、舞台・ミュージカル興行などを展開し、多数の自社IPを保有する株式会社マーベラスと、テンセントの完全子会社であるImage Frame Investment (HK) Limitedが、資本業務提携を締結。

2021年10月株式会社KADOKAWAと、IPの電子書籍、アニメ、ゲーム作品等の中国配信などを通じた協業の強化を目的として、資本業務提携を締結。

2021年11月:Nintendo Switch向けゲームソフト「Ninjala(ニンジャラ)」や、スマートフォン向けゲームソフト「鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル」を開発したソレイユ株式会社を子会社に持つ、Wake Up Interactive Limited(ウェイクアップインタラクティブ)を買収。

2021年12月株式会社資生堂と、ソーシャメディアとECを掛け合わせたプラットフォームの構築や、デジタルを活用した美容体験の進化など、世界中の中国人消費者に新たなサービスを提供することを目的として、3年間のグローバル戦略的パートナーシップを締結。

2.4つのメタバース事業支援サービス

「Tencent Cloud Day」では、音声・映像業界、ゲーム業界、インバウンド業界の日本企業による「Tencent Cloud(テンセント・クラウド)」の活用事例が紹介され、あわせて、「4つのメタバース事業支援サービス」が発表された。同社が長年蓄積してきたテクノロジーとコンテンツを活かし、メタバースへ参入に関心のある日本企業向けに提供される。
Tencent Cloud Day特設ページ

1)バーチャルヒューマン

Virtual Human|Tencent Cloud
Tencent Cloud Dayのバーチャル司会を務めたVirtual Humanの小志(こし)氏(画像出典:Tencent Cloud

「Tencent Cloud Day」は、バーチャルヒューマン(Virtual Human)の小志(こし)氏の登場で幕を開けた。
バーチャルヒューマンとは、アバター生成や音声インタラクションなどのテクノロジーを活かしてマルチモーダルインタラクション*機能を持たせたキャラクターを利用できるサービス。MCだけでなく、電話接客やマーケットインフルエンサーとしての役割も可能。

マルチモーダルインタラクション
マルチモーダル(視覚・聴覚を含めた様々な種類の情報)を利用して、インタラクション(コミュニケーション)を取ること。

Virtual Human|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud

バーチャルヒューマンにはいくつかの生成方法があり、キャラクターイメージのリアルタイムキャプチャーとAIアルゴリズムなどを利用して実際の人物を置き換える方法(写真上部)や、AIアルゴリズム、3Dモデリング、クラウドレンダリングなどを利用してオーディオとビデオ素材ファイルから生成する方法(写真下部)などだ。テンセントが今回発表したものは後者で、オーダメイドできる。

Virtual Human|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud

3DモデリングとVRによって構築することもできる。インタラクティブな要素を追加してユーザーと対話したり、バーチャルコンサートを開催するためにバーチャルキャラクターを作成することも可能。

2)レンダAR・VRクラウドレンダリングサービス

AR・VRクラウドレンダリング|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud

vGPUリアルタイムレンダリング技術によって、AR・VRコンテンツを高速で配信できるサービス。文化観光、文化博覧会、展示会、建築、不動産など、多くの業界で活用できる。ユーザーはスマートフォンからでもアクセスでき、難しい設定は不要(今回は「WeChat」でQRコードを読み込む方法が紹介されていた)。

3)AR広告の埋め込み

AR広告の埋め込みは、オリジナルの動画やライブストリーミング、テレビ番組などにもにAR広告を埋め込み(配置)できるサービス。
5G時代の到来とともに、動画はコミュニケーションツールとなり、動画広告も普及しているが、退屈なものが多く、ユーザーに抵抗感を与えてしまうこともある。一方で、オリジナル動画やライブストリーミングに直接AR広告を埋め込んでも、コンテンツの視聴には影響しないため、抵抗感を大幅に減らすことができる。

AR広告の埋め込み|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud

4)3Dサイネージ

3Dサイネージは、ゴーグルなどのデバイスを使わずに、裸眼で3D画像を視聴できるサイネージを提供するサービス。クラウドレンダリング、AIアルゴリズム、クラウドサービスによって、最大5.3メートル、22倍まで高解像度で拡大して文化遺産などを楽しむことができる。

3Dサイネージ技術|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud
3Dサイネージ技術|Tencent Cloud
画像出典:Tencent Cloud

3.テンセントの展望

テンセントはこれまでのゲーム開発などを通じて、仮想空間やデジタルツイン*の構築、人間の姿をした「バーチャルヒューマン」の生成などの技術を蓄積してきた。これらの技術はメタバースにも転用できることに加え、自社クラウドサービスを利用することでコンテンツ配信もでき、競合と差別化できると判断し、サービス展開を決めたとのこと。これらノウハウを活用し、企業の用途ごとに仮想空間の構築からアバター作成、コンテンツ配信までワンストップで支援する。

デジタルツイン
直訳すれば「デジタルの双子」。現実世界から取得した様々なデータを基に、デジタル空間に同じもの(双子)をコピーする技術。

テンセント・クラウドのコマーシャルバイスプレジデントである趙剣南(チョウ・ケンナン)氏は、「メタバースに参入しようとしている日本の顧客に対し、技術サービスを提供する用意ができている」と講演を締めくくった。