メタバース結婚式の海外事例【未来のオンライン挙式】

新型コロナウイルスは様々な業界に影響を与えている。結婚式場業界もそのひとつだ。
密を避けるために延期や中止を余儀なくされたり、規模を縮小して行われたりなど、様相が一変している。必要に駆られた「オンライン挙式」という新たな形が注目されている中、「メタバース結婚式」も選択肢のひとつになるのだろうか。

1.コロナ禍における結婚式の実情

結婚式場業「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」

結婚式場業にも感染拡大を防止するガイドラインが存在する。公益社団法人日本ブライダル文化振興協会らが、政府からの要望により策定した、結婚式場業「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」だ。
本記事執筆時点では2021年12月6日改訂版が最新だが、これによれば、マスクの着用、十分な間隔(目安は2m以上)の確保、ゴスペルや雅楽(ががく)の合唱・料理の大皿盛り・大声を発する余興・大音量のBGM・渡航者参列などの制限、オンライン打ち合わせの環境整備など、多くの対策が講じられている。厳かな雰囲気こそ保たれるが、残念ながら羽目を外すことはできないだろう。

コロナ禍での結婚式に関する調査

株式会社アスマークが2021年4月7日~同12日に、20~50代の男女計260人を対象にして行った調査結果がある。

まずは、コロナ禍において、主催側・参列者側のそれぞれが求めている形式に関する調査。「直接会場に来て欲しい(行きたい)」という回答が多いものの、「オンライン形式*」や「招待しない」と回答する人も一定数いることが見て取れる。

なお、ここで言う「オンライン形式」は、メタバースでの参列ではなく、「Zoom」などのビデオ通話システムを利用したものを指す。

コロナ禍で求められる参列形式|アスマーク調べ
コロナ禍で求められる参列形式(アスマーク調べ
コロナ禍で求められる参列形式|アスマーク調べ
コロナ禍で求められる参列形式(アスマーク調べ

次に、実際に「オンライン形式」で参列した人の割合に関する調査。2020年2月から、調査が行われた2021年4月までの期間においては、約16%が「オンライン形式」となっている。

オンライン挙式へ参列した人の割合|アスマーク調べ
コロナ禍で、オンライン挙式へ参列した人の割合(アスマーク調べ

「オンライン形式」を選択をする層があるということは、そこにはニッチな需要があり、結婚式場業各社が参入する(参入しなければならない)状況にも頷ける。

2.メタバース結婚式の事例

これまでの結婚式では、「オンライン形式」は、主に「ビデオ通話システム(Zoomなど)を利用するもの」を指していた。今後は、「メタバースを利用するもの」も選択肢のひとつになり得るのだろうか。2つの海外事例を紹介したい。

事例1)アメリカのメタバース結婚式

1つ目はアメリカの事例。2021年9月4日、Dave氏(60歳)とTraci氏(52歳)は、現実世界とメタバースの両方で(同時進行で)結婚式を挙げた。

メタバース挙式|アメリカ
新郎のDave氏と新婦のTraci氏(画像出典:INSIDER

新型コロナウイルスの影響により、多くのカップルがオンライン挙式の検討を余儀なくされているが、Dave氏とTraci氏にとっては代替案ではない。2人が働く会社のCEOからの提案もあり、最初からメタバース結婚式を考えていたとのこと。
バーチャル教会などの会場は、eXp World Technologies, LLC.(アメリカ)が提供するメタバースプラットフォーム「Virbela(ヴァーベラ)*」で構築された。

Virbela(ヴァーベラ)
eXp World Technologies, LLC.(アメリカ)が提供する、メタバースプラットフォーム。オフィス、展示商談会、学校の授業、大規模会議、カンファレンス、音楽ライブなどのイベントを行うことができる。北米を中心に世界中の多くのユーザーによって活用されていて、スタンフォード大学(アメリカ)などにも導入されている。日本では2020年5月頃から広まり、神戸市伊藤忠テクノソリューションズ株式会社などが活用している。

Virbelaの紹介映像

Dave氏とTraci氏は、マンチェスター(アメリカ・ニューハンプシャー州)で、100人のゲストを招待した通常の結婚式を開催したが、渡航制限や他の理由によって参列できない人のために、バーチャル会場も用意した。結婚式が2つの世界で同時に進行し、メタバースのスクリーンには、現実世界の2人が映し出される演出だ。

メタバース挙式|アメリカ
メタバース挙式の様子(画像出典:mailOnline
メタバース挙式|アメリカ
メタバース挙式の様子(画像出典:mailOnline

アバターや、Traci氏のアバターが着たウェディングドレスは、この日のために特別にカスタマイズされたもの。また、招待客も自分のアバターをカスタマイズすることができ、バーチャルのサッカー場やビーチ、海賊船で遊んだり、パーティーではダンスを楽しむこともできた。

メタバース挙式|アメリカ
メタバース挙式の様子(画像出典:mailOnline

なお、今回の、「Virbela」を利用したメタバース結婚式の見積もりは3万ドル(約350万円)以上だったが、カスタマイズをなくせば1万ドル(約120万円)でも実現できるとのこと。

事例2)インドのメタバース結婚式

2つ目はインドの事例。Dinesh Sivakumar Padmavathi(ディネシュ・シバクマル・パドマバティ)氏(24歳)と、Janaganandhini Ramaswamy(ジャナガナディニ・ラマスワミ)氏も、現実世界とメタバースの両方で結婚式を計画中だ。

メタバース挙式|インド
新郎のパドマバティ氏と新婦のラマスワミ氏のアバター(画像出典:CNN
メタバース挙式|インド
パドマバティ氏とラマスワミ氏(画像出典:CNN

インドでも、新型コロナウイルスの影響により、伝統的な盛大な結婚式の中止や縮小を強いられている。2人が住むタミルナードゥ州(インド)でも、結婚式の出席者が100人までに制限されている。そんな2人が、制限を受けない会場を見つけた。タブレットやノートパソコンを通じて世界中から参加できるメタバースだ。パドマバティ氏は、「コロナ禍のせいで、現実世界の大勢の人が参列する結婚式は不可能になった。それならメタバースでやろうと2人で決めた」と語っている。

2人は、2022年2月に予定しているメタバース結婚式に2,000人を招待した。「Potterhead(ポッターヘッド):ハリー・ポッターシリーズの熱狂的なファン」を自認する2人が選んだのは、「ホグワーツ魔法魔術学校」をテーマにしたバーチャル会場だ。

メタバース挙式|インド
「ホグワーツ魔法魔術学校」をテーマにしたメタバース(画像出典:CNN

現実世界の結婚式は、チェンナイ(タミルナードゥ州の首都)から約270km離れた、ラマスワミ氏の出身地であるクリシュナギリ地区の村で、親族や親友だけを招いて開催される。
その後、2人はメタバースにログインし、バーチャル会場で招待客に挨拶をする。招待客は「ホグワーツ魔法魔術学校」を探検したり、アバターをカスタマイズすることができる。

そして、メタバースだからこそのユニークな利点もある。それは、ラマスワミ氏の亡くなった父親にも、アバターとなって参列してもらえるということだ。
パドマバティ氏は、「父は昨年4月に亡くなった。そこでいま、(父に)外見が似た3Dアバターをつくっている。きっと私たちを祝福してくれるはず。これはメタバースでしかできないこと」と語っている。

なお、このメタバース結婚式の見積もりは、設計や開発、ホスティングを含めて15万インドルピー(約22万円)とのこと。

3.リーガルウェディングという壁

「リーガルウェディング」とは、海外において現地の法律に基づいた法的効力を持つ結婚式を指す。直訳すれば、「リーガル(Legal):法的な」「ウェディング(Wedding):結婚式」だ。
国によって条件は異なるが、結婚式当日に資格を持った司祭などに立ち会ってもらい、結婚を誓った証として「婚姻証明書」を受領する流れ。

一方で、メタバースでの結婚式は、このリーガルウェディングに該当しない。本記事で挙げた2つの事例は現実世界でリーガルウェディングを執り行うため、法的にも夫婦として認められるが、メタバースだけではそうはいかない。

メタバース結婚式が、海外でのリーガルウェディングとしての地位を得られるのはまだまだ先になるであろうが、お披露目や区切りという意味での結婚式としては、ひとつの選択肢として一考に値するのではないだろうか。もちろん、市区町村の窓口で婚姻手続きを行えば、それがリーガルウェディングとなる日本においても同様だ。

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