2022年2月4日午前6時(米国時間)、Meta Platforms, Inc.(本社:アメリカ、CEO:Mark Zuckerberg 以下、Meta)は、同社が運営するメタバースに「Personal Boundary(パーソナルバウンダリー:個人境界線)」を導入すると発表した。まずは、「Horizon Worlds」と「Horizon Venues」が対象となる。
個人境界線は、アバター同士が設定した距離内に近づき過ぎることを防ぎ、パーソナルスペースを確保し、望まない交流を避けることができるようになる。
参考:Metaニュースリリース
1.Horizon WorldsとHorizon Venues
Horizon Worldsとは
「Horizon Worlds(ホライゾン ワールド)」は、VR*オンラインゲーム。あくまで現時点ではあるが、ソーシャル要素は少なく、ゲームがメインとなる。利用するためには、同社VRゴーグルの「Oculus Rift S(販売終了)」、または、「Oculus Quest 2」が必要。
Oculus Quest 2(Amazon)
VR
「Virtual Reality(バーチャル リアリティ)」の略。仮想現実の意味。専用のゴーグルを着用するなどし、周囲360度の映像によって、実際にその場に居るような体験を得られる技術。
2020年8月に公開されたベータ版を経て、2021年12月9日にアメリカとカナダの18歳以上を対象に一般リリースされた(日本でのリリース時期は未定)。なお、開発当初の名称は「Facebook Horizon」であったが、FacebookからMetaへの社名変更に伴い、サービス名も「Horizon Worlds」に改称された。
Horizon Venuesとは
「Horizon Venues(ホライゾン ベニュー)」は、VR映像プラットフォーム。コンサート、スポーツイベント、コメディーショーを最前列で楽しむことができるサービスで、国内外のアーティストなどのイベントを開催している。
「Horizon Worlds」同様、利用するためには「OculusQuest 2」が必要。また、開発当初の名称は「Venues」。
2.個人境界線による距離は約1.2メートル
「Personal Boundary(個人境界線)」の初期設定では、自分のアバター*と、他者のアバターとの間に4フィート(約1.2メートル)の距離があるように感じられるようになっている。
※上の画像にある個人境界線は、機能のコンセプトをイメージしやすいように可視化したもので、実際には表示されない。
具体的には、他者アバターの個人境界線内に入ろうとすると、システムによって前進することができなくなり、各アバターのパーソナルスペースに侵入することを防ぐというもの。すで実装されている「他者のパーソナルスペースに侵入すると手が非表示になる」というハンドハラスメント対策を強化させた格好となる(他者のアバターとハイタッチやグータッチをしたいときには、腕を伸ばす必要がある)。
今後も、利用者からのフィードバックをもとに改善を続け、将来的には、個人境界線の範囲(大きさ)をカスタマイズできるようにするなど、適切な形を探る。
アバター
アバター、アヴァター (avatar) は、ゲームや仮想空間内での自分自身の分身。外見や服装、性別などを自分で設定でき、他のアバターと会話をしたり物を交換したりできる。サンスクリット語「avataara」が英語「avatar」となり、「化身」という意味を持つ。
3.Metaが個人境界線を導入した理由
Horizon Worlds内では、いわゆるセクハラ事件が発生している。
2021年11月26日、ベータ版のテスターとして参加していたユーザーのアバターが、見知らぬ人のアバターにセクハラ(手探り)されたと報告した。2021年12月には、女性ユーザーのアバターが、3~4人の男性ユーザーアバターにセクハラ(乱暴)されたと主張した。
Metaは、このような場合に備えて、「Safe Zone(セーフゾーン)」と呼ばれるブロック機能を用意している(起動方法は下図参照)。この機能を利用すると、プライベート空間が創り出され、他のユーザーは、見ることも、話しかけることもできなくなる。また、いわゆる通報することもでき、Oculusのヘッドセットに保存されている情報がMetaに送信される仕組み。しかし一方で、機能を広く周知し、誰もが簡単に利用できるようにしなければならないとしていた。
今回の「個人境界線」機能は、常時、且つ、標準設定となった。VRのような比較的新しいメディアにおいては、利用者の行動規範を確立するために重要だと考えているためだ。同社は「VRは、すべての人のものであり、また、そうであるべき。VRの体験をより優れたものにするため、フィードバックを集め、常に改善し続けている」と述べ、今回の発表を締めくくった。