「Hyundai(ヒョンデ)*」は、2022年1月6日(現地時間)、アメリカラスベガスで開催されたCES 2022で幅広い構想を発表した。この記事では2つを取り上げる。
- シンガポールグローバルイノベーションセンター(HMGICS)を、メタバースプラットフォーム内にもデジタルツインの「メタファクトリー」として建設。
- 遠隔操作できるロボットを介して、メタバースと現実世界を自由に往来。
Hyundai(ヒョンデ)
Hyundai Motor Company(現代自動車)。韓国の自動車メーカー。日本では「ヒュンダイ」と呼称されていたが、2020年6月に「ヒョンデ」と世界統一された。
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1.デジタルツインの「メタファクトリー」を建設
「Hyundai」は、 「Unity Technologies*」と「未来メタバースプラットフォーム構築とロードマップの構築のための戦略的パートナーシップ」を締結したと発表した。
そして、今年末に現実世界で完工予定のシンガポールグローバルイノベーションセンター(HMGICS)を、「デジタルツイン*」の概念で設計した「メタファクトリー」としてメタバース内にも建設する考えを明らかにした。
メタファクトリーは、自動車の製作過程で問題が発生した場合の解決策発見や、工法確立や改善の検証などに活用される。現実世界の工場を稼働しなくても工程を最適化することで、HMGICSの運用効率化や高度化を目指す。
なお、現実世界のHMGICSは、敷地4万4000㎡、延べ面積9万㎡、地上7階規模。下記は予告ビデオ。
Unity Technologies(ユニティ テクノロジーズ)
Unity Technologiesが開発・販売しているゲームエンジン「Unity」は、「ポケモンGO」「白猫プロジェクト」など、さまざまなARゲームに使用されている。ゲーム開発では世界シェアナンバーワン。
デジタルツイン
デジタルの双子。現実世界から取得した様々なデータを基に、デジタル空間に同じもの(双子)をコピーする技術。
2.ロボット遠隔操作でメタバースの先へ
「Hyundai」のChang Song(チャン・ソン)社長は次のように話している。
「Metamobility(メタモビリティ)の考え方は『空間・時間・距離がすべて無意味なものになる』というもの。ロボットをメタバースに接続することによって、私たちは現実世界と仮想世界の間を自由に行き来できるようになる。メタバースが提供するそこにいるかのような没入型の体験からさらに一歩進んで、ロボットが人間の身体感覚の延長となり、メタモビリティによって日常生活を再構築し、豊かにすることができるようになる」
一般的なメタバースのイメージは、仮想世界の中だけの話であり、そこに仮想の分身としてのアバターが存在する。ここには、自身とアバターの物理的なつながりはない。しかし、現実世界にいるロボットをメタバースに接続することによって、仮想世界と現実世界を自由に往来することができるようになる考え。つまり、没入体験からさらに一歩進んで、ロボットが身体機能や身体感覚の拡張や延長を行うようになるということだ。
具体的とは言えないかもしれないが、例として、火星にいるロボットに接続、操作することで、現実世界の火星にいるかのような感覚を体験できるというものだ。
同社は、2021年6月にロボット研究開発大手Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)を10億ドル(約1160億円)以上で買収している。仮想世界メタバースと現実世界の接点となるロボットを操作することによって、遠隔地での作業や体験を可能にする構想には、Boston Dynamics社の技術が大いに活用される。また、メタバース構築についてはMicrosoft(マイクロソフト)と連携する方針も明らかになっている。