株式会社HIKKY(本社:東京都渋谷区、代表取締役:舟越靖 以下、HIKKY)が開催した「バーチャルマーケット2021」では、総勢171名のスタッフが活躍した。この中には、一般公募によって集まった104名の有志スタッフが含まれる。
メタバースでの「仕事」は新しい働き方として注目されて、アルバイト求人サイトなどもすでに登場している。時給は1,300~2,000円ほど(筆者調べ)で、必要な知識や経験、設備環境などを考慮すれば適正と言えるのではないだろうか。
就業形態は、ボランティア、アルバイト、企業スタッフなど様々だが、「バーチャルマーケット2021」での仕事はどのようなものだったのか、事例を共有する。
1.バーチャルマーケットとは
バーチャルマーケットとは、株式会社HIKKYが開催する世界最大のVRマーケットフェスティバル。通称「Vket」。バーチャル空間上にある会場で、様々なデジタル商品や、リアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売買できる。近年ではメタバースに参入したい企業の出展ブースが増加している。ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」内で構築され、第1回は2018年。日本はもとより世界中から100万人を超す来場者を誇る、メタバースの先駆け的イベント。
また、バーチャルマーケットは2つのギネス世界記録™を樹立している。
1つ目は、2021年2月18日に取得した「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」。1,104ブースで記録樹立となった。なお、バーチャルマーケット4には、企業ブース43と一般サークルブース1,400の計1,443ブースが出展したが、制限時間内にカウントされたものが対象となった。
2つ目は、2021年8月14日に取得した「1時間でTwitterに投稿されたアバターの写真の最多数」。対象となる写真(投稿)の条件は、「バーチャルマーケット6出展のLogicool Gのブース内の写真の投稿」「自分のアバターが一番目立っていて、胴から頭までが写っている写真の投稿」「1Twitterアカウントにつき1カウント」であった。500投稿以上で記録樹立であったところ、2021年8月14日22:00~同23:00の1時間に2,311枚(有効数)が投稿された。
2.株式会社HIKKYとは
HIKKYはメタバース事業やVR/AR領域における大型イベントの企画・制作・宣伝、パートナー企業との新規事業開発を主業務とするVR法人。エンタテインメントVRを牽引する注目のクリエイター達をメンバーとして、バーチャル世界の生活圏・経済圏・文化圏の発展と、クリエイターの発掘・育成を目標に設立され、「最も魅力的なバーチャル世界とアクセスを提供する」を掲げている。
その理念の通り、xR技術を利用したコンテンツやサービスを表彰する「XR Creative Award 2020」で最優秀賞、VR業界における卓越した業績を表彰する「VR Awards 2020(VRマーケティング部門)」で最優秀賞、プログラミング言語「Ruby」を活用したITビジネスコンテスト「Ruby biz Grand prix 2021」でグランプリ(大賞)など、数々の受賞歴がある。バーチャルディズニーストア、バーチャル秋葉原駅、Audi e-tron VR試乗体験ブース、バーチャルHAWKS STOREなどを構築し多くの企業と協業している。
株式会社HIKKY公式サイト
3.バーチャルマーケット2021での仕事
1)ーチャルマーケットの「ワールドツアーコンダクター」
バーチャルマーケットに初めて来たお客とスタッフがより一層楽しめるように、バーチャルマーケットの会場を案内しながら一緒に見て回る有志スタッフで、一般公募によって104名が集まった。「メタバースを作ってきた人間がメタバースを引っ張っていくんだ」という強い想いで協力した応募者もいたとのこと。
募集はTwitterでアナウンスされ、チャットサービス「Discord」で詳細を確認、本番前には事前説明や下見ツアーも行われた。なお、閉会式のクレジットには、ワールドツアーコンダクターたちの名前が表記された。
ワールドツアーコンダクターを務めた有志スタッフは、こう語っている。
『もし宜しければ、御一緒にいかがですか?』その一言からツアーが始まりました。一人でいた初心者の方。最初はマイクも使えなかったけど、操作方法を教え、一緒にVketを周り始めました。次第に一緒に周る人は増えていき、とても賑やかなツアーに。人と共に巡る時間、それこそが最高のツアーでした(トータさん)
出典:PR TAIMES
まず自分がVketをとことん楽しむこと。そしてその楽しみを、ツアーを通して参加者さん達にも伝えるということを心掛けました。初めて来た人には楽しい思い出を。初めてじゃない人には新しい発見を。そしてひとりの時よりももっと楽しくワールドやブースを楽しんでもらえたことがツアーをやっていった中で一番の楽しみになりました!(ヤギ福さん)
出典:PR TAIMES
2)BEAMS ショップスタッフ
バーチャルマーケット内のBEAMS店舗で、普段は現実世界の店舗で接客をしているショップスタッフがが中心にシフトを組み、総勢44名でメタバース接客を行った(各取材対応もアバターで行ったとのこと)。
BEAMS担当者は、こう語っている。
バーチャルマーケットへの出展が3度目となった今回も、総勢44名のショップスタッフがBEAMSバーチャルショップでお客様をお迎えしました。毎日来て下さる常連のお客様がいたり、VRでお会いしたお客様が後に店舗へ会いに来てくださったり、パラリアルな出会いを大いに満喫し、早速次の会期を待ち遠しく感じています。これまでもスタッフのアバターはそのシーズンのスタイルを着ていましたが、今回は初めてBEAMSオリジナルアバターを販売し、全国のリアル店舗とオンラインショップで販売している今季のスタイルを、メタバースの中でもお客様にご提供できるようになりました。
出典:PR TAIMES
3)大丸松坂屋百貨店 メタバース大宴会スタッフ
「バーチャル大丸・松坂屋」店舗内のコミュニケーションスペースで会話をしながら、リアルで好きな食品を持ち寄り、宴会をしようという企画。9名のスタッフが運営に携わった。開催日には、ユーザーの生の声を聞くため、大丸松坂屋百貨店の担当者もアバター姿で参加。YouTubeでの同時生配信も行われた。
企画の主催者は、こう語っている。
『リアルでどれだけ距離が離れていようと、VRでは目の前にいる。一緒に食卓を囲んでご飯を食べるという体験を提供したい。』と考えて企画しました。今のご時世、沢山の人が集まって宴会するといった事は難しいですが、VRでは関係なく楽しめます。(餃子force)
出典:PR TAIMES
企画の参加者は、こう語っている。
事前に担当者の方に商品をピックアップしていただき、スタッフみんなで「バーチャル大丸・松坂屋」のグルメ商品を購入して、実際に同じものを食べながら宴会を行いました。より、同じテーブルを囲んで食事をする感覚が深まったと思います!(しつじいさん)
出典:PR TAIMES
4)凸版印刷 「かなプロマーケット」バーチャルショップスタッフ
バーチャルショップ「かなプロマーケット」にて、総勢8名のスタッフが来場者を迎えた。
接客をしたスタッフは、こう語っている。
かなプロマーケットはVRChatで行われるVketに出展しているので、本来のターゲット層であるクリエイター以外にも『フレンドとの思い出の一枚をグッズに!』というアプローチがとても響くように感じました。 多くの方にオリジナルグッズが作れる楽しさを体感していただけたのではないかと思います。(わたあめ子さん)
出典:PR TAIMES
4.「メタバースでの仕事」のこれから
HIKKYは、「メタバース上には次々に新しい職業や役割が生まれています。これからもメタバースの可能性を切り拓き、ユーザーとともに新しい生活圏・経済圏・文化圏を構築していくため、バーチャルマーケットを始めとした様々なサービスやイベントを提供していく」と意気込みを語っている。
今はまだ、先行してメタバースに関わり、メタバースを形作ってきた一部の人たちに牽引されている印象は拭えないが、バーチャルワーク需要はますます高まり、雇用も創出されるだろう。しかし、好きなときに、好きな場所から、好きな姿で働けるからこそ、より、コミュニケーション能力を含めたスキルや自制心が求められることになりそうだ。
なお、2022年夏に「VirtualMarket 2022 Summer」が開催されることがすでに決定している。