InWithが究極のメタバースウェアラブル「電子ソフトコンタクトレンズ」の開発状況を発表【VRゴーグルを脱ぐ日はやってくるか】

メタバースコンタクトレンズ|InWith

InWith Corporation(アメリカ 以下、InWith)は、CES 2022で「メタバースコンタクトレンズ」の開発状況を発表した。同製品はCES 2021で初めて発表されたが、今回はメタバースを意識した発表になっている。

CES
CES(シー・イー・エス)とは、毎年1月にラスベガスで開催される電子機器の見本市。「Consumer Electronic Show」の略であるが「CES」が正式名称。第1回開催は1967年。一般公開されておらず業界関係者のみが入場できる。CES公式サイト

動画出典:InWithニュースリリース

1.究極のメタバースウェアラブル

InWithのニュースリリースでは、同製品を「究極のメタバースウェアラブル」と位置付けていて、プレスリリースの要点は下記。

  • 電子ソフトコンタクトレンズプラットフォームを発表。
  • 今年中にFDAの認証を得て市場に流通させる計画。
  • コンタクトレンズという見た目ではわからないデバイスだから、現実世界からメタバースへの遷移が簡単になる。
  • ソフトコンタクトレンズに装着できるものとしては世界初。
  • 最初のアプリケーションは「調整可能ビジョン」と「拡張ビジョン」。
  • 「調整可能ビジョン」は、遠近両用の視力を補正する機能。
  • 「拡張ビジョン」は、モバイルデバイスと連動して、ナビゲーションを重ねて表示する機能(MR機能)。

プレスリリース全文は下記(筆者和訳)。

InWithはCES 2022で究極のメタバースウェアラブルを披露する

これは、来たるべきメタバースを視聴するための最も高度なプラットフォームである可能性があります。大衆が快適に着用できるようにデザインされた電子ソフト「コンタクトレンズ」プラットフォームにより、現実世界からメタバースへの遷移が簡単になります。
InWithは、今年中にFDA(Food and Drug Administration:米食品医薬品局)のブレイクスルーセラピー*の指定を受け、その後まもなく、未来的なコンタクトレンズを市場に出すことを計画しています。

このテクノロジーの最初のアプリケーションは、「調整可能ビジョン」と、モバイルデバイス制御と連動した「拡張ビジョン」。市場規模は数十億ドルと言われているが、この究極のアプリケーションは十分に没入型のメタバースを視聴でき、超軽量で、実世界とメタバースを行き来できる事実上目に見えない方法である。業界の専門家によれば、メタバースは1兆ドル市場になると推測されている。

2022年にCESで展示されるInWithのテクノロジーは、開発者が拡張ビジョンディスプレイチップアプリケーションを、何百万人もの人々が毎日着用するソフトハイドロゲルコンタクトレンズに配置できるようにする構成です。InWithは、これまでのところ、コンポーネント回路を現代のソフトコンタクトレンズの材料に統合する機能を公開している唯一の企業です。現在、2022年に取得した数百の特許をもって、フォーチュン50のトップ企業と協力してこのテクノロジーの最初のインテレーションを市場に投入しています。

今回の発表は、2020年の、有名ブランドのコンタクトレンズにおける伸縮性のある電子回路の画期的なディスプレイに続くものです。この開発は、2020年に最も人気のある技術のひとつで、フォーブスによる記事を獲得しています。
InWithは、通常の製造プロセスで材料を膨張および収縮させることにより、固体コンポーネントと回路をハイドロゲル材料に統合する重要な技術を開拓し、特許を取得しています。この画期的な進歩により、複数の開発者が、毎日何百万人もの人々がすでに使用しているコンタクトレンズや眼内レンズ用のディスプレイや眼科改善アプリケーションを制作できるようになりました。

最新のAR / XR Metaverseビジュアルアプリケーションから、近視や老眼に苦しむ人々へのより良い視力提供まで、InWithテクノロジーは、モバイルデバイスに接続され、調整可能な視界と眼科機能の未来のための電子革命を起こすことができます。

ブレイクスルーセラピー
ブレイクスルーセラピーとは、FDA(Food and Drug Administration:米食品医薬品局)の制度。この指定を受けると、承認までの期間短縮のための開発・申請計画の相談や審査資料の段階的提出・審査などが利用可能になる。重篤あるいは生命にかかわる疾患に関する薬剤の開発および審査の促進を目的としている。

2.コンタクトレンズプラットフォーム市場について

InWithは、2020年に大手コンタクトレンズメーカーのBausch&Lomb(ボシュロム)との提携を発表している。

また、AppleやAmazon、Google出身のエンジニアらが設立したスタートアップ企業のMojo Vision Inc.(アメリカ)も、同じく2020年に国内大手コンタクトレンズメーカーのメニコンとスマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」の開発に向けて提携を発表している。

同社は、2021年1月4日、「アディダスらスポーツやフィットネスの大手ブランドと提携して、アスリートがウェアラブル機器を使ってデータを収集し、パフォーマンスを高めることに活用する方法を模索する」とも発表している。

遡れば、Googleのスマートコンタクトレンズもある。涙液中のグルコースレベルを測定し、糖尿病患者の血糖値管理のためのものだ。2014年1月に新規プロジェクトとして発表され、Googleのグループ会社であるVerily Life Sciencesが研究開発をしていたが、「正確な血糖値を測定するのは難しい」という結論に達し、2018年11月に開発の保留が発表されている。

InWith、Mojo Vision、Google、三者三様だが、FDAの認証を受けなければならないという点では同じだ。着用したコンタクトレンズで様々な情報を読み取れるようになれば、ヘッドセットを持って外出する必要はなくなる。SF映画のような未来だが、見えそうで見えない。実用化はもう少し先になるかもしれない。