2022年1月13日、セカンドライフを運営するLinden Research(Linden Lab)は、同社及びセカンドライフ創設者であるPhilip Rosedale(フィリップ・ローズデール)氏が「戦略アドバイザー」として復帰することを発表した。
1.Second Life(セカンドライフ)とは
元祖メタバースはと言えば、「Second Life(セカンドライフ)」を思い浮かべる人は少なくない。2003年に公開されたインターネット上の3D仮想空間で、プレイヤーはアバター*を操作し、仮想空間を自由に散策したり、文字や音声のチャットでコミュニケーションを取ったり、買い物したり、服や家具、建物、武器などを制作することもできる。つまり、メタバースだ。
今では「早すぎたメタバース」と揶揄されることもあるが、2007年頃に日本でもブームになり、利用ユーザ比率が世界4位になった時期もある(アメリカ、ドイツ、イギリス、日本の順)。
アバター
アバター、アヴァター (avatar) は、ゲームや仮想空間内での自分自身の分身。外見や服装、性別などを自分で設定でき、他のアバターと会話をしたり物を交換したりできる。サンスクリット語「avataara」が英語「avatar」となり、「化身」という意味を持つ。
下記紹介動画は12年前のものだが、その構想とクオリティには改めて驚かされる。
特筆すべきは、RMT(リアルマネートレード)*が公式に行われていたこと。PayPalを介して、セカンドライフ内の通貨:L$(リンデンドル)を米ドルに換金することができた。
全盛期の2007年3月頃の為替は「270リンデンドル=1米ドル」、ゲーム内通貨供給量は約19億リンデンドルで、約8億4千万円(当時換算)が流通していたことになる。
RMT
RMTとはReal Money Trading(リアル マネー トレード)の略。オンラインゲーム内の通貨、アカウント、キャラクター、アイテムなどを、現実の通貨(リアルマネー)で売買すること。多額のゲーム内通貨や貴重なアイテムの入手には相当のプレイ時間が必要だが、時間短縮やゲーム内格差を埋めるために需要が生まれた経済活動。しかし、ほとんどのゲームではRMTが禁止されている。
運用開始から19年目となる現在でも、デジタル商品、不動産、サービスなど年間3億4,500万件の取引があり、年間GDPは6億5000万ドル。20億を超えるユーザーが存在し、マーケットプレイスでは800万個のユニークなアイテムが販売されている。
2.Second Life創設者が戦略アドバイザーとして復帰
セカンドライフ創設者であるRosedale氏が2013年に設立した空間オーディオ企業のHigh Fidelity(ハイ・フィデリティ)は、2022年1月13日、Linden Lab社への出資を発表した。High Fidelity社のメタバース開発チームのメンバーがLinden Lab社に加わり、Rosedale氏も戦略アドバイザーとして関与していく。
Rosedale氏は次のように話している。
「Second Lifeのような仮想世界には誰も近づいていない。大手テック企業がVRヘッドセットを提供し、広告主導の行動変容型プラットフォームでメタバースを構築しても、万人が楽しめるような魔法のデジタルユートピアは生まれない。Second Lifeは、居住者にポジティブで豊かな体験を提供し、さらに数百万人が参加できる余地があり、同時にサブスクリプション型のビジネスを構築しました。仮想世界をディストピアにする必要はない」
また、Linden Lab会長のBradford Oberwager(ブラッド・オバーワガー)氏は次のように話している。
「Philipが1999年にSecond Lifeを公開して以来、その先見の明のある挑戦には困難もあったが、未来を創ってきた。彼とHigh Fidelity社のチームは比類のない経験を持っていて、目の前の大きなチャンスを活かせる機会を待ちきれない」
海千山千の企業がメタバースに進出し、あの手この手でユーザー獲得を狙っている今、19年先を行くLinden Lab社(Second Life)がどのような仮想世界を創るのか、先見の明を持つ創設者Rosedale氏がどのような独自性を打ち出すのか、注目が集まっている。