2021年12月23日、総合建設会社の株式会社奥村組(本社:大阪市阿倍野区、代表取締役社長:奥村 太加典)は、株式会社Synamon*(本社:東京都品川区、代表取締役:武樋 恒)と「メタバース技術研究所」を構築した。
出典:PR TIMES
Synamon(シナモン)
株式会社Synamon。「XRが当たり前の世界」を実現するために、VR・ARを含むXRやメタバース市場の創造に取り組んでいるテックカンパニー。事業内容は、VR / AR / MR関連製品 / コンテンツの企画、開発、運営。株式会社Synamon公式サイト
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1.奥村組技術研究所が抱えていた課題
「メタバース研究所」は、茨城県つくば市に所在する奥村組技術研究所内施設の室内環境実験棟を活用したもの。同研究所で行われている研究は下記。
- 「免震のパイオニア」としてあり続けるための技術の研鑽、応用技術の開発
- ICTやロボット、CIM、BIMの活用による工事の急速化・省力化や管理業務の効率化など生産性を向上させる技術の開発
- 耐震補強や更新・延命化など既存ストックの活用に繋がるリニューアル技術の開発
- 安全性向上、バリアフリー化、省エネルギー化、低炭素化など社会の安全・安心や環境負荷低減を実現する技術の開発
- 建物の室内環境(音響、熱、光)の快適性や社会的環境(土壌・地下水など)の保全・改善に寄与する技術の開発
- コンクリート、土質、岩盤など材料・物質に関する基礎的研究
これら研究のためにモックアップを作成し実験や施行検討を行っているが、「実寸大モックアップ」、「縮尺版モックアップ」、いずれにも課題を抱えていた。
「実寸大モックアップ」は、現実に近い素材を活用し実物大で再現するが、作成のコストが高い、保管場所の確保が困難、検討後に産業廃棄になるという課題があった。
一方の「縮尺版モックアップ」は、縮尺を変更し3Dプリンターなどで再現するが、サイズが小さいためにモックアップ作成が困難、実物大ではないため手戻りが発生するという課題があった。
2.「メタバース研究所」構築の目的
同研究所は、国土交通省の『令和3年度 BIM*を活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業』に選定されていて、前述の課題を解決すべく、バーチャル上でモックアップを再現できる「メタバース技術研究所」を構築した。メタバース上のVRシミュレーションを通して実験や施行検討の精度を向上させ、設計・施工工数の削減を目指している。
BIM
「Building Information Modeling」の略。コンピュータ上に作成した3次元の建物に、面積、材料、仕上げ、コスト、管理情報などの属性情報を付加した建物モデルを構築すること。また、その手法。
具体的には次のような効果が期待できるとのこと。
- 施工工数の削減
バーチャル上にモックアップを再現することで実寸大スケールであらゆる角度の施工検討ができるため、手戻り発生の減少に貢献できます。 - BIMモデル活用にかかるコストの削減
BIM、i-Constructionなどの既存データを活用することでシームレスにバーチャル上に3Dモデルを配置できるため、コストをかけずにかつ手軽に施工検討が実施できます。 - 関係者の合意形成
繰り返し実施される各種実験のための増改築工事について、バーチャル空間上で設計・施工における関係者の合意形成をおこなうことで手戻りのない実験計画を進めることができます。 - SDGsへの貢献
バーチャル空間では現実の素材は一切使用しないため、産業廃棄物を減らすことができSDGs推進につながります。
3.今回のVRシミュレーションの概要
今回は7棟ある施設の中から室内環境実験棟の室内環境実験室におけるVRシミュレーションを実施した。
この室内環境実験室は、“特定の日射条件におけるオフィスなどの室内環境の快適性や省エネルギー性などを検証するために、4つの異なる条件の居室を再現できる”作りになっている。内部のアルミサッシ増設、外部のアルミルーバー増設などの改修工事が必要だが、改修工事のBIMモデルにおけるVRシミュレーションによって実験の検討精度を向上させ、設計・施工工数の削減を図る。